私は85歳の男性です。
毎年発表される統計によると、 日本人の病死の原因の第1位は 癌、 第2位は心筋梗塞、 第3位は 脳卒中となっている。
しかし、 心筋梗塞と脳卒中はともに 血管に起因する病気であり、この二つを足し合わせるとガンを抜いて 断然トップに立つ。
それどころか、この二つの血管病以外にも最近では頻繁に新聞紙上を騒がせている「大動脈解離」も典型的な血管病であり、これを足し合わせると死に至る病 に占める血管病の割合は さらに一層高まる。
しかもその上、さらに悪いことには、血管の病気は事故の始末が悪く、最悪の事態を出しても寝たきりや 麻痺の症状が残って、その後も長く苦しむことが多いし 再発度も極めて高い。
それだけに血管病に陥る 危険性をできる限り 避けなければならない。
ところで 心筋梗塞とは 心臓の筋肉に酸素と栄養を送り届ける血管が詰まることによって心筋が壊死するものであり、脳卒中は 脳に通ずる血管が詰まり、「卒」=突然、「中」=倒れる病気であり、脳出血、くも膜下出血、 脳梗塞に細分される。
この中で、以前は脳出血が一番多かったが、今では脳梗塞がトップであり、しかも脳内部の太い血管が血栓で詰まるケースが増えている。
このように死に至る病の原因は身体全体の老化ではなく、血管の老化に根差している。
血管の老化とは血管が①硬くなり②厚くなり③内空(血管の通り道)が狭くなることだが、このような状況になると血管は弾力性や柔軟性を失い、十分な量の血液が流れなくなり、流れそのものも遅くなる。
そんな状態を放置しておくと、やがて血管が詰まったり破裂したりして、半身不随となったり一命を落とすことになる。このように寿命に直接関係する指標は「実年齢」ではなく「血管年齢」なのである。
血管年齢が実年齢よりも10歳以上老けている場合には、①喫煙②高血圧③糖尿病④高脂血症のいずれかが関与しているが、20歳以上も老け込んでいる場合には、間違いなくこれらの4つのほとんどがかかわっている。
そうと知りながら、そのままの生活習慣を漫然と続けていけば、いずれ確実にお迎えがやってくる。そうではなく、生活習慣を改善して血管を若返らせようとするのであれば、①なにがなんでも禁煙を断行したうえで②食べ過ぎず③飲みすぎず④少なくとも週に2回20分以上の早歩きを実施することが必須条件となる。
足を使う運動が大事なのは、それが第2の心臓だからである。足の静脈にはカタカナのハの字の形をした弁がたくさん配置されており、それらが下から上へと血液を送り出している。つまり、足の筋肉が運動によって収縮する度ごとに、足の静脈にある弁も一緒に収縮し、血液が勢いよく心臓へと戻っていく。
この運動をミルキングアクションと呼ぶが、日々元気よく過ごそうとすれば、この運動を活発に行うことが欠かせない。
そうした努力を怠り、長い時間飛行機や列車で同じ姿勢のままの状態を続けていると、足から心臓へと血が戻りにくくなり、体の一部に血液が滞ってしまい、血の塊である血栓ができやすくなる。
決戦は剥がれやすく、剥がれてしまうとたちまち血液の流れに乗って体内を循環し、他の場所の欠陥を詰まらせる。こうして引き起こされるのが心筋梗塞であり、脳梗塞である。それだけに、常日頃適宜適切な運動を欠かしてはならない。
ところで、「生活習慣病を防ぐには」というタイトルで厚生労働省が推奨しているのはテニスやジョギングなら週1回35分間、水泳なら週1回40分間である。40分間の水泳で消費されるのは300キロカロリーであるが、これと同じことを他の運動でやろうとすれば、体操なら1時間25分、自転車なら2時間、階段の昇降なら1時間、ゴルフなら1時間40分、買い物や散歩なら3時間20分となる。
つまり、ただ歩いているだけでは体力をあまり消費しないので3時間以上もかかってしまうが、速足なら1時間強で所定の目標を達成することができる。
こうした運動を習慣づけ、全身の健康を維持しようとすれば、せめて週に3回程度の実践が欠かせない。煙草を口にせず、食べ過ぎず飲みすぎないうえで、倦まず弛まず(うまずたゆまず)前期の運動を長年月にわたって守り続ければ、心身ともに健康な毎日を繰り返すことができる。
要は不撓不屈の精神を持ち続け、その掟を守り通せるかどうかにかかっている。