ガマンの限界を感じたコールセンター

家電修理という名のクレーム処理班

コールセンターで働く男性社員

私の簡単な自己紹介をすると、年齢44歳、性別は男、職業は某家電メーカーのコールセンターの受信業務を丸5年している。

コールセンターというのは色々な項目があり、分かりやすいものでは「お客さんから電話を受ける受信」、「こちらからお客さんに電話をかける発信」

私がこの某家電メーカーのコールセンターに入社したときから、お客さんから電話を受ける受信業務を担当している。

世の中には色々なお客さんがいるもので、顔が見えないのをいいことに、言いたいことを言ってくる輩が多い。

よく「お客様は神様だ」と言うが、そんなことは無い。私から言わせれば、神様なんて優しいものではなく、完全な悪魔にしか見えない

顔が見えず声だけなので、言いたいことを言ってくるわ、無理難題を押し付けてくるわ、謝りに来い!と家まで来させようとするわ、もう本当に人間の最悪な部分を毎日見ているし聞いている。

家電修理というのはその名の通り、修理を受け付けて工場に依頼して終わるものだと思っていたがとんでもない。

私が所属したのはクレーム処理班のど真ん中だったのだ。

言いたい事を言われて心がやさぐれる

家電修理というと聞こえは悪くないが、はっきり言ってやってることはクレーム処理。毎回毎回電話に出るたびほとんどのお客さんがまず怒っている

入社当初は本当にビビった。いきなり電話口で初めて会話を交わした相手から、怒鳴られるのだから。

比較的若い20代や30代のお客さんはそれほど怒らない。怒るには怒るが、いきなりではなくこちらの落ち度が明確だったときなどに怒り始める。

だが、これが40代から60代だと電話をとった瞬間から怒りだすこともしばしば。

お客さんの内容が理にかなっているのであれば良い。

こちらに非があれば当然謝罪し、それ相応の対応をさせてもらっている。

だが、本当に理不尽なことを言われることが多い。

どこかが壊れた、なにかが外れたというのならまだいいが、お客さんのほうで使いかたを間違えて壊したのに、それをお前のところの製品は柔すぎるんだ!!
と一方的に怒鳴りまくる。

また、すぐに新しいものと無料で交換しろ!なんて平気で言ってくる。

買ってから十年くらい経っているものを新しいものと交換しろなんて、どんな生活してきたらこんな人格になるのか?

心がやさぐれることがしばしばある。

お客さんはどこまでも調子に乗っていく

私は丸5年ほどこのコールセンターに勤めているが、もう本当にクレームの内容が色々あり過ぎて、良くこんなこと言えるな、というものが本当に多い。

「支離滅裂な内容で新品といますぐ交換しろ!」

「社長を俺の家まで謝りに来させろ!」

「お前のところの家電は日本で一番品質が悪い製品だ!」

なんて言われることもしょっちゅう。

ここまで毎日毎日クレームを受けているとさすがにダウンする同僚がいたり、新人なんかは一日目の研修で来なくなるなんてこともある。

それほど、この家電修理のコールセンターは過激であり、メンタルをやられる恐れがある職場と言える。

そんなメンタルにダメージを受けるクレームの中でも、ひと際 強烈なものがある。それは、どこまでも調子に乗っていくクレームを受けたときだ。

ほとんどのお客さんは怒ってはいるが、持っても30分くらい。怒るのはとてもエネルギーがいるので体力が持たないのだろう。

だが、たまに延々とクレームを言い続け言葉もどんどん調子に乗り、あげくの果てに電話しながら土下座しろ!なんてとんでもないものもある。

そんな長い時間かけて調子にどんどん乗っていくようなタイプのお客さんは、心身ともに大ダメージを受けてしまう。

良心的な言葉に涙を流すことも

「いい加減にしろ!言いたいこと言いやがって!」と強くお客さんに言えたら、どんなに楽だろうと思う。

気持ちがスッキリするだろうし、何よりメンタルをやられないだろう。

そんなことは夢のまた夢の話だが、心の中では大きな声で毒づくこともしばしばある。

だが、そんな過酷な状況でも本当に神様みたいなお客さんもいる。

周りからみたら普通の対応をそのお客さんがしているように見えるかもしれないが、世知辛く心身ともに傷ついたコールセンターの従業員にはオアシスに感じる

例えば、言葉遣いが丁寧であったりキチンと説明を聞いてくれたり、ご苦労様など労いの言葉などかけられると、それだけで涙が出てくる。

もちろん涙は周りのスタッフに見えないようにしているが、心の底から癒されるというか、許されている感じすらある。

お客さんと、とりとめのない話をしているだけでも癒され、やる気がチャージされていく。

それが改めて受けるクレームを跳ね返す原動力になる。そんなお客さんと話せたときは、心から感謝の念まで感じてしまう。

本当はクレームでは無いと気づいたとき

大体1日に多くて100件ほど、少なくて60件ほどの電話を受ける。その半数以上がクレームではあるが、先ほど述べたように心が安らぐお問合せもある。

そういう安らぐお問合せがあるからこそ、なんとかこれまでやってこれたのだろう。

しかし、丸5年も同じコールセンターにいると段々とお客さんの心の内側、本当の声がある程度わかってくるから不思議だ。

コールセンターで話を聞いていて気付いたのは、内容はクレームでとても理不尽ではあるが、何というか家電が壊れてしまった悲しさや寂しさ、大変さをクレームというものに変えて伝えているのだということ。

正直、理不尽でわがままで強烈なクレームは聞きたくもないし受けたくも無い。

だが、それでもしっかりと話を聞いていると、怒っているなかにも悲しそうな声になっていったり、悲痛な声になることに気がついた。

私もベテランの域に達していると思うのだが、何人ものお客さんの声を聞いていると、何となく辛さや悲しさがわかってくるようになった。

私はこれからも色々なクレームを受けて、心からウンザリするときもあるだろうが、悲しみを抱えてクレームを言ってくるお客さんがいるという事も、何かの役に立っていくだろう。

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