保育園に現れた変わった保護者
私は現在32歳で、専業主婦をしているのだが、保育士を8年間3か所で経験してきた。
その中で一番大変だったのは、保護者とのやり取りだ。子どもたちがどんなに可愛くて純粋な存在だとしても、保護者は決してそういう存在ではない。1つ1つの事に対して細かく指摘してくる親や、何にもしない、育児放棄一歩手前の親など本当に幅広い種類の保護者が存在する。
年配の保育士の先生は、昔と今の親では天と地の差があるとよくぼやいていたのも分かる気がする。中には子どもの事をちゃんと考えて、保育士に対してもきちんと接してくれる保護者も居るので、全てが悪いわけではないのだが、それにしても変わった保護者は年々増えているように思える。
そういった状況の中で、保育士が最も苦労するのはその保護者とのやり取りではないかとすら思う。
ここでは、今まで私が経験してきた保育士人生の中で、強烈だった保護者についての話を紹介していく。
ネグレクト?バイトリーダーのお母さん
その子が保育園に入園してきたのは、0歳児の頃だった。母親は20代前半で、バイトリーダーとして忙しく働いていた。その頃は子どもも、物言わぬ年頃なので、何も分からなかったのだが、髪の毛が臭かったり、前日と同じ服を着てくることが多々あった。
仕方なく保育園で沐浴をして、着替えさせることが多かったのだが、その都度母親にその事を伝えて家でもしてもらうように伝えると、曖昧な返答しか返ってこない日が続いた。
他にも、給食が無い日の弁当を忘れてくるのは毎回で、その前日は何人かの職員で母親に伝え、連絡帳にも書いて、最終的には電話を入れるようにしていた。それでも持ってくるのはレトルトの離乳食で、瓶に入ったものを周辺の薬局で買ってくるだけだった。
更に心配になったのはその子が年長児になった時だ。小学校に入学するときに行われる入学説明会当日、母親はその事をすっかり忘れてしまったようで行かなかったのだ。更に、健康診断さえもいかず、学校から保育園に電話が来る始末。他の子は保護者と行ってしまい、その子は涙を流していけなかったことを悲しんでいた。しかもそれを母親に伝えると、すっかり忘れて友人と遊びに出掛けていたとの事。
さすがにまずいと思い、職員間で相談後、父親を呼び出して現状を話すと、父親はとても驚いていた。何故なら、夜遅くに帰宅し、朝早く出勤していく父親は、子どもと母親の状態を全く知らなかったのだ。
しっかり保育園に通っているものだと思っていた子どもは、母親の寝坊で保育園に昼からくることも多く、綺麗に着飾った母親と対照的に髪の毛は何日も洗わない状態で服も昨日のまま、お弁当もない日がある状態ということを何一つ母親から知らされていなかった。
父親は、こちらの話をしっかりと受け止めてくれ、それから子育てに介入するようになり、子どもは父親と一緒に登園するようになった。無事に卒園し、小学校へと進学していったが、現在その子と母親がどのように関わっているのか気になるところだ。子どもも自立していっていたので、仲良く暮らしている事を祈っている。
教師だからこそ認めたくない我が子の障害
40代で初めて子どもを出産し、保育園に子どもを預けたいと訪れた母親が居た。しかし、普通なら園見学には子どもを連れてくるのだが、その日来たのは母親と祖母の二人。肝心の子どもは連れてこなかった。
そして祖母が一言、「母親が子育ての知識がなく、子どもの発達がほんの少し遅れてしまっている」とのこと。この時ベテランの主任保育士は、その子が障害児であることを瞬時に把握したそうだ。
しかし、どうやらその事実を保護者は認めたくない様子。結局子どもの状態が良く分からないまま、入園となった。入園してきた子は4歳児だったのだが、どう考えても発達レベルは心身共に2歳児レベル。
誰がどう見ても障害児であることは間違いなかったのだが、その子の保護者は誰一人としてその事実を認めようとせず、ただ普通の小学校へ進学させてほしいの一点張りだった。
しかし、こちらとしてはそうするわけにもいかず、臨床心理士や小学校とも連携を取りながらなんとか保護者を説得しようと試みたのだが、そうすると保護者は保育園が適当な事を言っていると怒りだしたのだ。
毎日のように、どうしてうちの子が障害児なんだと電話をかけてきて、病院での診断が下っても、そうするように保育園が仕向けたからだと言ってきたり、とにかく認めたくない気持ちが強かったようだ。
自分が教師をしているからこそ、教育熱心に頑張ってきた母親だっただけに、その事実をどうしても受け入れがたがったようだ。
そこで、臨床心理士の先生がまずは母親の心のケアから始めようと、精神病院を紹介し、母親のケアから取り組み、1年越しでようやく子どもも適切な処置を受け始めることが出来た。
そこから身体のリハビリもしたことで、少しずつではあるが成長が見られたのも母親にとっては納得いく要素の1つだったに違いない。自身の大切な子だからこそ認めたくない気持ちは分かるが、母親と電話で話した時間は100時間を超えていた。
子どもより美容室が大事?まだ子ども気分な母親
入園式の時、子どもよりひと際目立つ母親が現れた。派手なドレス姿で、なんと頭にはティアラがついていて、15センチのヒールで登場したのだ。
その場にいた誰もが驚きを隠せずにいたが、母親はみんなの注目を浴びてとても満足そうだった。その子どもも、ギャルの格好をした母親に負けず劣らずで、髪の毛にエクステを付けてきたリ、ネイルをしてきたりと女子高生のようだった。
外見がいくらそうでも、どうやら子育ての方は全くのノータッチの様子で、4歳児でまだオムツをしていて、尿感覚も分からない状態だった。
小学校でオムツをさせるわけにはいかないと、祖父母が保育園でトイレトレーニングをして欲しいと言ってきたのだが、トイレトレーニングは保育園だけでしても意味がないのだ。
実際長い休み明けには、オムツ生活が始まってしまう事を繰り返していた。母親は祖父母に子育てを一任していると言って、いくら声を掛けても聞く耳を持たなかった。そしてびっくりする事が起こったのだ。
その日は、いつもお迎えの遅いその子の母親が、閉園時間の7時を超えても迎えに来なかった。電話をするも電話にも出ず、祖父母にも電話を入れたが繋がらなかった。
子どもを不安にさせるわけにはいかないので、8時まで遊びながら待っていると、ようやく派手な音量を鳴らした車が現れ、母親が悪びれる様子もなくやってきた。理由を尋ねると美容室へ行っていたとの事。
しかも、閉園時間の7時からいったそうなのだ。さすがに園長先生へ報告し、後日しっかり話をしてもらい、母親の祖父母が謝りに来たが、謝るべきは母親であって祖父母ではない。子育てをしている母親がまだ子育てをされているようだった。
子どもの為を考えてほしい
いかがだっただろうか?
このように、保育園内には変わった保護者が多数いるのが現状だ。もちろん、こんな保護者ばかりではなく、ちゃんと子どもの事を考えてくれる保護者がいるのも事実なのだが、どうもそうではない保護者が目立つように思う。
子どもをしっかりと叱れない親が増えて来たという事は、3つの保育園で勤務してきたが、どこの保育園でも話題に上がっていた。泣かれたら面倒、嫌われたくないと、子どもが望んだことを全て叶えてしまう保護者が急増している。
しかし、社会を生きていくうえで、自分の思い通りにならない事なんて沢山あるのだ。実際経験してきているので分かると思うが、だからこそ子どもにつらい経験をさせたくないというのだ。
果たしてそれが子どもの為になるのだろうか?
親がしっかりと伝えていかなくてはならない事が他にあると私は思う。子どもの為を思うのならば、今一度自分の子育てについて振り返ってみて欲しい。少なくとも、私の挙げたような保護者のようでは、子どもが苦労する事は間違いない。
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