調剤薬局あるある~法律から面倒くさい患者まで~

調剤薬局

「なんでこんなに時間がかかるの?」

私は20代・女性。
大学卒業後、調剤薬局で約5年間、正社員として働いた。

最初の3年間は中規模病院の総合内科・胃腸科の門前、その後結婚し異動となり、小さい泌尿器科皮膚科と婦人科のクリニックの門前で働いた。

調剤薬局において、おそらく一番多いクレームがこれだと思う。

「なんでこんなに時間がかかるの?」

確かに、数種類の錠剤の数を数えて渡すだけならほんの1分もかからずにできるだろう。
しかし保険調剤薬局という所は、保険調剤の法律に乗っ取って点数をだし、それで会計が決まってくるので、パソコンへの入力は必須となる。

薬の数を数えて、その薬代だけ徴収するというわけにはいかないのだ。国から7割分のお金をもらっている分、国の方針に乗っ取って営業しなければならない。

さらに、処方箋の間違いはないか、とった薬に間違いはないか、処方箋とパソコンの入力は正しいかなど、必ずダブルチェックでやらなければならない。薬局にはたくさんの薬・似た名前の薬・同じ名前の単位が違う薬(●●錠50mgと●●錠100mgでは単純に量が倍入ってしまう)がある。もし間違えた時、体への影響は計り知れない。

つまり、本当に薬を渡すだけなら、1分でできる作業が何分かかかってしまうのは仕方のない事。こっちも必死にやっているので、頼むから焦らせないでほしい。

こちらを焦らせてミスをしたまま薬を渡したら、体に害があるかもしれないのはあなただよ、と言いたい。

ここ数年で変わったお薬手帳のあるなしで値段が変わる事情

これも国が法律をコロコロ変えるがために、薬局側も混乱、患者側も納得がいっていない事案だと思う。

まず、調剤に関わる法律は2年に1回(偶数年度に)変わると決まっている。

結論から申すと、2014年4月から2016年3月までは、いわゆる「お薬手帳」が持ってきてシールを張ってもらうと値段が20円ほど(3割負担の人の場合)高くなる、という法律だった。

患者側からすると、手帳をわざわざ持ってきているので余分にお金を払うなんてどういう事だ?となる。

そして2016年4月から2018年3月適応の法律でいくと、お薬手帳を持ってきてくれた人には40円(3割負担の人で)薬局によって安くなる、という事になった。

ではまず古い法律の解説から。

簡単に言ってしまえば
「手帳をもってきて薬剤師に見てもらう」=「しっかり管理をしてもらえ、併用薬もチェックしてもらえる」(薬局側にとっては時間がかかる)
という概念のもと、値段を余分につけているのだ。

まぁ、併用薬が無い人にとっては全くメリットのない話である。
薬局側としても大変不可解な法律であり、一応毎回手帳のあるなしを聞くけれど(これも患者からしたらかなり鬱陶しい話だと思うが)結局持ってこない人ばかりだった。

では最新の法律について
今度は手のひらを返したかのごとく、持ってくると安くなった(お薬手帳を流行らせたければ最初からこれにすればよかったのに・・・)

一応概念として

「手帳があれば、一目で併用薬の有無が確認できる。わざわざ患者に薬名を聞き出すことなく、より安全に調剤ができる」といったものかと思われる。

しかし、古い法律が患者さんの頭の片隅に残っているのと、手帳を持ってこないと高くなるので文句を言う人も少なからずおり、浸透するまでにかなり時間を要した。

そして、やはり毎回あるなしを聞きに行くのが面倒くさい。受付の時に出してくれる人も増えてきたのでありがたい。

が、受け付けの時点ではどんな患者さんかわからないため、迂闊に「手帳お持ちですか?」と聞くと、「そんなの要らんから。毎回聞くな」とクレームに発展したケースもあるため、その人のカルテを確認してからでないと聞けないのが面倒くさい。

2018年4月の法律改定ではもう手帳のところは変えないでほしい。

薬局によって値段が変わる

ちなみに、先ほどのお薬手帳の最新の法律で「薬局によっては値段が安くなる」と記載した。ではどんな薬局に手帳があると安くなるのか?

ポイントとして、以下があげられる。

2種類以上の病院から激しい偏りがなく処方箋を受けてつけていそうな薬局。

国が目指しているのは、1つの大きい病院からそこばかりの処方箋を大量に受けてつけている薬局ではなく、処方せんの受付が少なくても良いから、色々な病院やクリニックからの処方箋を受けてつけている町中の薬局、と考えてもらうと良い。

つまり小さい規模で、門前の病院が2種類以上あれば手帳を出すと安くなる可能性が高い。
まあ、気になるのであれば、実際にそこのスタッフに聞いてみればよいと思う。

但し、大きい病院で、門前も1つの病院に偏ってそうな薬局は、元々の点数が小さくていくつもの病院の処方箋を受けている薬局より安いのである。

だから、手帳を持ってきて値段が40円ほど安くなったところで、総合的にみると、大した差はないのである。

他にも、元々の値段が高い薬局として、出す薬の75%以上を後発品で出している薬局であったり、持っている在庫の種類が多い薬局であったり、そこの責任者(管理薬剤師)が5年以上のキャリアがあったりと、色々な条件をクリアしている薬局は、それだけ国から認められている薬局という事で、そうではない薬局より、同じ薬を同じだけもらっても少し高くつくかもしれない。

薬局としては、一人患者あたりちょっとでも多く報酬をもらいたいので、その条件を満たせるように頑張っている所である。

賞味期限の切れた薬について

薬にも一応賞味期限があるのをご存じだろうか。

もちろん注射液などは1年持たないほど短い物が多いし、漢方薬などは入庫した日から4~5年持つものもある。

通常、普通の錠剤であればだいたい入庫されてから2年くらいのものが多い。

しかし、その賞味期限の表示は、薬の外箱にしか書かれていない事が多く、それを薬局側が見落とすと、賞味期限切れの薬を患者さんにお渡ししてしまう事になり、患者さんも気づかずに飲んでしまう事がある。(貼り薬や塗り薬、一部の錠剤のヒートには期限が書かれているものもあるが)

今まで大幅に切れたものを出したことはないが、1~2か月切れているものを出したことが数回あり、患者さまに謝って新しいものと取り換えをした。
(後から別の患者さんに同じ薬を用意しようとしていた所、過ぎ去った年月日が書かれている紙が、その薬の保管場所にあったため、判明した)
(ぶっちゃけ1~2か月切れたところで体への害はないのだが、何かあってからでは遅いので)

どの業界でも「先入れ・先出し」というのは常識だと思うし、薬局もなるべくやるように努力はしている。

しかし、いったん外箱を空けてしまうと外箱から期限の部分を切り取らない限り、その薬の期限が分からない(患者さんの薬を取りそろえている時に開けるのがほとんどなので急いでいて、箱を捨ててしまう、という事もある)

そして、期限の部分を切り取ったは良いが、ゴムで縛っておくなどをしないと、切り取った期限の紙が何枚かあり、どれがどの期限のものかわからなくなる、ということである。

なるべく努力はしている!が、調剤薬局において期限管理はやりにくくずさんであることをここに報告しておく。

期限の切れた薬の月々の破棄値段

では、期限が切れてしまった薬はどうするのか。
もちろん「捨てる」のである。

しかし薬は1個1個高い物から安いものまである。1つ何百円とする薬が何十錠もあれば平気で1万円を超す。月によって高い安いはあるが、1万以上は捨てている。

期限が切れる前に、同じグループ会社の薬局でその薬が出ていれば、そこで使ってもらうように郵送するなどの努力もかなりしているのだが、破棄を0にすることはできていないのが現状である。

大体、薬というものは1箱100錠単位で購入する。
よくあるパターンが、門前ではない病院の処方箋を持ってきた患者さんがいて、薬局に在庫のない薬があり、取り寄せで良いから用意してほしいと言われたとき、12錠必要なだけでも、最小包装の100錠で買って、残り88錠を余らせて、そのまま出ることなく期限を向かえてしまう、というパターンだ。

ここで患者様に言いたい。

できれば薬はその病院の門前薬局でもらってほしい!門前薬局でない所に行ってしまうと、取り寄せの可能性が高く、薬局の在庫になっていずれ破棄になってしまう事もあるし、なにより患者さん自身がすぐ飲めず、後で取りに来てもらったりと面倒な事になるぞ!と。

門前の薬局が人が多くて待たされる!とか、先に買い物をしてきたので、戻るのが面倒になり、家に近い薬局にきた!とか、色々理由を言ってくれるが、お互いのためにも門前でもらっていただきたい!
(そりゃあ、数ある薬局の中から、門前ではなく、わざわざうちに来てくれるというのは有難い話ではあるのだが・・・)

最近は、薬局事情を考慮してくれる卸さんもいて、10錠単位でバラで売ってくれる業者さんも増えている。但し、デメリットは時間がかかりどうしても発注した翌日になってしまうという事。(100錠の箱単位での発注なら、早い時は電話し3~4時間で届くのだが、バラ発注となると、手続き等色々あるのだろう。仕方のない事だが)

そこでもう一つ患者さんにお願いがある!
在庫がない薬が風邪などの緊急を要する薬でなければ、「明日でいいよ」と言ってくれないだろうか!?

明日で良いとなれば、こっちも急いで100錠包装を配達してもらう事なく、バラの薬を買って、余りを最小にすることができるのだ!

どうか薬局の在庫事情をご理解いただきたい。

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