警備員の裏事情 知られざる警備の実態とは

警備員

警備員のアルバイト研修を受けに行く

年齢制限がなく、学歴や前科も関係ないという、数少ない職種が「警備員」である。誰もが聞いた事のある職種ではあるが、実際にやってみた人はそんなにいないだろう。

僕は、大学時代にアルバイトとして、ある警備会社に電話して面接を受け、研修を受けた後に雇われる事となった。その時の年齢は21歳だった。職業は某三流大学の学生だ。

何故、僕が若くして警備員というアルバイトを選んだかと言えば、子供の頃に護身術を習っていた為、今までそれを活かした事ができなかったので、ぜひ警備員で活かしてみよう、と思ったからだ。

ネットで武道経験者は研修が不要という記事を見て、研修期間を短縮できるかと思ったが、やはり研修は受けさせられた。

しかし驚いたのが、とてもいい加減な会社らしく、半日ぐらい警備員の仕事のビデオを見せられ、
「本当は実際に縄の結び方等もやるんだけど、時間がないからビデオで見て自分でやってみて」
と言われ、別室でビデオを見ながら一人で縄と格闘していた。

こんな研修で良いのだろうか?と疑問に思ったが、楽だから別にそれでも良かったので、口答えはしなかった。

そんな研修だったので、不合格になるわけもなく採用された。そこで次の仕事日を決め、給料は1か月ごとに手渡しという支払方法を選択して家路に着いた。

次の仕事の予定が一週間しか決まっていない、という日雇い派遣のような体制のバイトだなぁ、と感じた。

警備の仕事先へ出発する

そして、アルバイトとは言えど、不安と期待で一杯な初出勤の日が来た。
事務所のドアをノックして開けると、そこには十数名の男性が群がっていた。
その中の社員である一人以外は、全員アルバイトだそうだ。
見たところ、僕より若い人はいなかった。
ほとんど30代以上の中年だった。
奥の方の事務机に座っている中年の女性以外は、すべて男性だ。

男性たちはずっとしょうもない雑談をしている。
社員が「そろそろ出発です」と呼びかけ、ゾロゾロと建物の1階に降りていく男たち。
意外と人見知りな僕は、ほとんど挨拶以外は話さなかった。
出入りが激しい職種なのか、
「新人バイトの○○君です!」
といった紹介もなく、名前での点呼のみだった。

1階は駐車場となっており、そこには2台のワゴン車が停まっていた。
どうやらこのワゴン車で現場まで行くのだろうな。
次々と乗り込んでいくアルバイトたち。
僕も皆に続いて乗り込んだ。
もう車内はギュウギュウ詰めで、車内の座席じゃない所に座っている人や、荷物が乱雑に置いてあるトランクで荷物の上に寝そべっている人もいた。

あぁ・・・外国人の派遣労働者みたいだな、とつくづく思った。

いよいよ初の警備に挑戦する

ギュウギュウ詰めで居心地が悪すぎる車内で揺られながら、1時間ぐらいで現場に到着した。
いよいよ緊張の警備員デビューだ。
初の仕事内容は、サーキット場の警備だった。
車やバイクが好きな僕としては、かなりテンションの上がる仕事場だ。
そして社員から仕事の説明を受け、それぞれの持ち場に散っていく。

最初の仕事は、初めてだからかサーキット場の観客席の後方の警備で、ただ単純につっ立っているだけで、迷子や酔っぱらいがいた場合、迷子センターに連れて行く、といったものだ。

さあ、気合い入れてやるぞ!と興奮気味に持ち場についたが、まぁ・・・ほとんど何も起こらない。6時間以上警備して、迷子をセンターに届けたのが1回のみ、という結果だった。

別にノルマもないし、迷子が1回も発生しない場合も多々あるという。

やはり辛かったのが、6時間休憩なしでトイレの時は素早く済ませて持ち場に戻らなければならない事と、6時間座る事もできず、ずっとその場で立ちっぱなし、という事だ。

あまりに足が棒になりかけたので、少しだけ縁石に座っていたら、見回りのバイト警備員に見つかり、そこそこ注意された。

最初の説明では、ほとんど持ち場を動かず直立不動で警備していろ、という指示だったが、
見回りが見ていないところで、足をストレッチしたり、柔軟体操をしたりして乗り切るそうだ。

見た目が悪いので、どこかへ座るのは禁止されている。
休憩もなしに長時間立っていると、本当に足が痛くなる。
監視がなければ、ストレッチを適度に実施すると良いだろう。

夜間の警備にも挑戦する

日中の警備が終わり、休憩を5時間ぐらい取った後、いよいよ夜間の警備が始まる。
今回は2泊3日の出張警備だからだ。

警備員は交通費節約の為か、現地に出向して何泊かする勤務が多い。
休憩時間も意外と少なく、勤務と勤務の間に5時間ぐらい空きがあるだけで、その間に仮眠を取らなければならないのだ。

仮眠しておかないと、警備中に睡魔に襲われる事間違いなしだろう。
ほとんど動かない肉体労働なので、工場作業よりも眠くなる可能性が高い。

夜間の警備は、サーキット場のレース車の車庫を警備する、といった仕事だった。
警備とはいっても、相変わらず車庫の前でつっ立っているだけである。
この警備って意味あるのか?と思っていたが、予想に反して、昼間の警備よりも客の相手をしなければならなかった。

そう、ガラの悪い客が、レース車を見せろ!とつっかかって来るのである。

社員からはそんな説明を受けていなかったが、誰も通すな!という指示だったので、そういったアウトローな輩を必死で追い払っていた。

当然ではあるが警察と違って、胸ぐらを摑まれようと、耳元で怒鳴られようと公務執行妨害は警備員には適用されないので、客の狼藉(ろうぜき)を耐え抜いて追い払うしかない。

しかも、相手が殴りかかってきた等、明らかな犯罪行為に及ばない限りは、敬語で接してお帰り頂くしかないのだ。

一見、辛い事ばかりのようだが、たまに立ち寄ったお客様に
「大変だけど、頑張ってね!」
と励まされる事もあり、良い体験をさせてもらったな、と今では思っている。

最高の警備場所とは何処か

夜間の警備を耐え抜き、早朝になったら代わりの人員が来たので交代した。
狭い車内で無理矢理仮眠を取り、日中の仕事に復帰だ。
今回の仕事は、サーキット場の観客席の警備だった。
レース好きな人にとっては最高の警備場所だろう。

僕はあまり詳しくないのだが、今までの警備よりもサーキットを走るレース車を眺める事ができるので、とても楽しかった。もちろんずっとレースばかりを眺めていたら、見回りに怒鳴られる為、しっかりと警備はした方が良い。

警備中の息抜きとして、数秒間だけレースを眺めて楽しむ、といった感じになる。
もちろん観客席の後方なので、はっきりとはレースが見えないから、それを目的として警備員をやるのはオススメしない。

別の現場での話らしいが、警備そっちのけで野球の試合を観戦したバイトがいたらしく、それが発覚して厳しめのペナルティを会社が負った事もあるそうだ。

以上が僕の警備員体験談である。
他にも祭りの駐車場警備や、道路工事の交通整理もやったが、すべての現場に言える事とは、例えばサッカーが好きなら、サッカー場の警備は楽しいだろう。たとえ試合が見られなくても、熱心なサポーターを見られてテンションが上がるかもしれない。

遊園地が好きなら、遊園地の見回り警備なら乗り物には乗れなくても、アトラクションがど迫力で動いている様を見られるので、面白い仕事となるだろう。

興味のない現場であった場合は、楽しくもなく単純に警備をこなすだけとなる。

しかし、テーマパークや競技場のように、夢のある場所に少しでも関わりたければ、いつかその場所を警備できる可能性もあるので悪い仕事ではないかな、と僕はそう考えている。

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