私の食品工場アルバイト体験談「地獄のベルトコンベア」

食肉工場

「地獄のベルトコンベア」と呼ばれた場所

私は、大阪在住の32歳男性。
現在は営業職に就いているが、10年ほど前に短期間、食品工場のアルバイトをしたことがある。

その食品工場では、誰もが知っている某有名スーパーの店頭に並んでいる牛肉、豚肉、鶏肉の切り身やミンチなどの加工肉を製造し、ラッピングまで行ってスーパーに納品する工場だ。

工場において絶対に厳守しなければならないのは、清潔で安全な肉をスーパーに届けること。そのためには、絶対に異物混入などがあってはならない。

毎日、朝礼でみんなで熱心に、自分の帽子に髪の毛がついていないかなどを丹念にチェックする。もちろん、全身作業着で帽子・マスクを着用し、一切自分の体毛が落ちないようになっている。

私は、加工された肉のラッピングの場所に配属され、最終的に配送するスーパーの支店ごとに仕分けするところまでを担当していた。初めて配置された場所は、みんなから「地獄のベルトコンベア」と呼ばれた場所だった。

寒さとの戦いのコンベア地獄

この地獄のベルトコンベアには、40歳を超えるベテランの作業員さんとともに配置された。なぜここが地獄のベルトコンベアと呼ばれるのか、すぐに判明した。

このベルトコンベアというのは、鶏肉の部署、豚肉の部署、牛肉の部署、その他の肉(鴨肉など)の部署で作られた、ミンチや切り身、味付けをした肉などが、器に乗っかった状態でベルトコンベアに運ばれてくるもので、ここで肉の商品ごとに台車に載せ替えて、そのままラッピングのコーナーへその台車ごと商品を運ぶというものである。

つまり、ラッピングをされていない、トレイに乗った大量の肉が自分の目の前に流れてくるのだ。

まず最初の地獄は、寒さ。
当然生肉が行き来する場所なので、温度管理は寒く設定してある。
巨大な冷蔵庫そのものだ。

朝のスタート時には、まだそんなに生肉は流れてこない。朝の作業が始まったばかりだからだ。だから、あまり体を動かすこともない。とにかく寒さとの戦いだ。これがまず最初の地獄である。

大量の生肉コンベア地獄

そして、1時間ほどたっぷり身体を冷やされたあとは、嫌という程身体を動かすことになる。

だんだん作業員の出勤人数が増えていくと、ベルトコンベアに流れてくる生肉の量も多くなってくる。

この生肉がたくさん乗っかったトレーを、手に持って、自分の背後にある8段ほどになっている台車に移し替える。

大きな細長いお盆のようなものに、肉の種類にもよるが、4つから8つほどの生肉の載っかったトレイが流れてくる。このお盆が、ベルトコンベア全体を埋め尽くすほど大量に流れてくるのだ。

私の配置された場所から2メートルくらい先の場所がベルトコンベアの終点で、ここまでお盆がきてしまうと、溢れてお盆が床に落ちてしまう。
つまり、肉が床に大量に落ちてしまい、それはまさに地獄絵図になってしまうのだ。

そこで、万一肉のトレイの入ったお盆が大量に流れてきて収集がつかなくなった場合は、緊急措置としてベルトコンベアの緊急停止ボタンを押すことが許される。

地獄の感謝祭セールでの出来事

普段の日でさえ地獄のように大量にベルトコンベアに流れてくる生肉たちだが、その量が半端なく流れてくる時がある。それが、スーパーの感謝祭セールの前日だ。

翌日に全国のスーパーで行われる月に一度のお客様感謝祭。この日はとにかく特売の日なので、普段よりも格安に設定された生肉たちが、普段の生産量の2倍から3倍以上も流れてくる。

ベルトコンベアの緊急停止ボタンも、一体1日で何度押されたことだろうか。

そしてある時、事件は起きた。

緊急停止ボタンを押すのが間に合わず、高級なしゃぶしゃぶ用の肉がベルトコンベアから落ちてしまったのである。私はこのしゃぶしゃぶ用の肉を拾って、廃棄コーナーに持って行こうとした。

ところが一緒にペアを組んで作業していた40代のスタッフが、

「あんまり高い肉を廃棄コーナーに持って行ったら、評価がさがってしまう。
幸いそんなに形は崩れていないから、そのまま台車に載せてラッピングコーナーまで持っていけ」

と言うのだ。

あえなくラッピングコーナーへ

しかし、そのしゃぶしゃぶ用の肉は、明らかに落ちた時に接していた。
あきらかに衛生的には完全にアウトである。

私は何度もそのベテランスタッフに確認したが、いいからラッピングコーナーに運んでいけ、というのだ。ラッピングコーナーに持っていかれるということは、ラッピングで大きなトラブルがない限り、そのまま商品としてスーパーにその肉が流れてしまうということだ。

私の心配をよそに、そのしゃぶしゃぶ用肉はあえなくラッピングコーナーへと運ばれてしまった。焼けば大丈夫、焼けば衛生的には何も問題はない、と自分に言い聞かせながら。

きっと、私が見た時だけなく他の時でも、こういったことはおそらくあったのだと思う。
なので、そのスーパーで売られている生肉を見かけたときは、私は一切手をつけない。その後そのベテランスタッフはいなくなったので、同じようなことが2度と行われていないことを切に祈るばかりだ。以上が私の食品工場体験談である。

管理人からのコメント

私は以前、スーパーマーケットの食肉販売コーナーでアルバイトしたことがあります。

工場から運ばれてきた冷凍肉を解凍してラッピングする作業を行っていました。

そのスーパーマーケットでのアルバイトも結構体力的に大変でしたが、話を聞いていると今回の食肉工場での「地獄のベルトコンベア」では私の10倍くらい大変そうですね(-_-;)

食肉工場のアルバイト体験談は他のライターさんの記事もあります。

ある牛丼チェーン店の食肉工場でのアルバイトの裏話

年を取ってからパートやアルバイトをすることになったら、こういった工場作業は肉体的につらいのでやりたくないですね。

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