法律事務所の客はろくでもない
私は30代女性で、法律事務所でパラリーガルをしている。
法律事務所に来る客の 9割はまともでない。相当に変なやつが多い。
客は弁護士に問題を解決してもらいたくて来る。例えば、離婚や借金、相続、不動産など生活の中で起こった様々な問題を法律に沿って解決するのが弁護士の役割だ。
だが、正直、普通に生きている人は法律事務所にお世話にならずに一生を終えるだろう。まともな人は返済できる額しか借金しない。離婚するにしても、話し合いで解決する協議離婚がほとんどで、弁護士に来るような離婚の案件は、最悪なケースが多い。相手が不倫をしている、財産分与が上手くいかない、など争っている場合だ。
そう言ったトラブルに巻き込まれる人間は、人格的にかなり問題がある、もしくは未熟すぎる人間が多い。ほとんどの場合、もっと知恵と考えがあれば、そのトラブルを避けられたに違いないのだ。客は自分が悪いのに被害者面して相談に来る。自分の事は棚に上げて、争っている相手ばかり批判するのだ。トラブルは弁護士により解決しても、なぜその問題が起こったのか自分のことを省みない限り、またその客は別のトラブルに巻き込まれるだろう。
法律事務所には犯罪者が出入りする
弁護士は刑事事件で犯罪者の弁護をする。国選弁護人と言い、国からこの犯罪者の弁護をして下さいと指示も来たりする。おそらく、弁護士が獄中にいる犯罪者に会いに行って弁護をするというイメージが強いと思うが、実際は犯罪者は法律事務所に通うのだ。
性犯罪や詐欺、横領などは示談が成立して起訴されなかったら、刑務所には行かない場合が多い。示談を成立させるためや、慰謝料を少なくする話し合いのために、法律事務所に頻繁に通うのだ。
また、一番多い刑事事件の覚せい剤などの薬物犯罪は、初回は執行猶予がつく場合が多いので、刑務所に入らない。でも、薬物使用者は繰り返し薬物犯罪を犯したり、窃盗などの他の犯罪も犯すことが多いので、数年おきに同じ犯罪者が法律事務所に通うことになるのだ。
弁護士の多い法律事務所に勤務していると、毎日のように犯罪者と接する機会がある。正直、見た目は好青年なのにレイプ魔だったり、優しそうなおじさんが横領犯だったりするので人は見た目によらないと思っている。
弁護士も裁判所も正義のためにではなく、お金のために働いている
ドラマや映画の中では、弁護士は正義の味方であり、裁判所は世のため人のために存在しているというようなストーリーが多い。しかし、実際はサラリーマンが給料のために仕事をしているのと全く同じ構造だ。
弁護士は依頼者がどんなに悪徳企業でも、残虐な犯罪者でも、自分が担当になったら必死で弁護をする。私情は挟まず、弁護をしている依頼者が裁判に勝つことやお金を払わずに済むこと、慰謝料を多く取ることなど、依頼者の益になるように動くのが常識だ。正義のために、自分の依頼者が悪いやつだからといって、依頼者が不利益になるようにはしない。特に金払いの良い客には弁護も頑張る。お金を払えない人からの依頼はもちろん断る。弁護士も商売なのだ。
裁判所の裁判官も書記官も同じで、公務員だから自分の立場を守るのが一番大事。法律に則って、事件が滞りなく、判決を出すことができればそれでいいのだ。事件が多い時は時間がないので、証拠の辻褄が合ってなくてもスルーで事件を終わらせる。
事実は小説より奇なり
平和に平凡に生活を送っている人はそれだけで幸せだ。世の中には小説の中のような話が転がっているのだ。法律事務所に勤務してわかったのは、たいていの人間は自分がいい人で常識的な人間だと勘違いしているということだ。そして、人はトラブルに巻き込まれたら、本性が出る。自分はこんなことしないと思っていても、その状況になってみないと理解できない行動もあるのだ。
例えば、金持ちはたいてい相続でもめる。父親が危篤状態なのに、そっちのけで自分の相続の取り分を多くするために弁護士に交渉を頼んでくる。父親は、自分が死にそうな時に子供たちが遺産を取りあって揉めていることを知れば悲しむだろう。酷い話だと思うのが普通だ。
法律事務所に勤め始めた頃はそう思っていたが、あまりにも同じような人が多いので、考えが変わった。自分の親がもし金持ちで預金や不動産などの多くの資産があったとしたら。その時に住宅ローンや子供の教育費が多くかかってお金に困っているとしたら、同じ行動を絶対に取らないと言えるだろうか。
法律事務所で働くことの楽しさ
法律事務所で働くことは向き不向きがあると思うが、合っている人間にとっては本当に楽しいものだ。人のプライバシーが覗ける仕事だからだ。どんなに親しい友達でも、家庭の懐事情や深刻な問題などは相談しづらいだろう。
例えば、破産の申し立てをする時などは、破産に至った経緯を文書にまとめないといけないので、依頼者の人生のストーリーを聞くことになる。離婚の裁判をする時も離婚に至った経緯を聞き出すし、刑事事件では犯罪に至った経緯を詳しく聞くことになる。2時間サスペンスを見るより、面白いのだ。
それに、生活に関わるあらゆる行政上の手続きやトラブル解決方法に詳しくなる。不動産や事件にも詳しくなるし、生きていく上で便利なことが多いのだ。トラブルに対応する知識や能力が付くことで、実際のプライベートの生活に役に立つこともよくある。弁護士に比べると責任も少ないので、気楽に仕事ができるところも魅力だ。世の中をもっと知りたいと思う方はおすすめだ。