嫌なお客は食べ方でわかる
49才 女性。牛丼屋で働き始めて10年。
新人の頃は料理を運んだり作ったりするだけで、客の様子を見る余裕等なかったが、慣れてくると色んな事が見えてくる。
クレ-ムをつけてくる客はだいたいわかる。
牛丼屋なので、男性の一人客、もしくは二、三人客が多く、パッと食べてサッと帰るのが主流なのに、あきらかに食べ方が遅い。つつくようにちびちびとサラダに手をつけ辺りをキョロキョロ。そして次は牛丼をまたちびちび。
こういう客は要注意だ。
「おい」と呼ばれて飛んでいくと、サラダに髪の毛が入ってただの、牛丼に衣服の毛玉が入っていただの文句をいう。こちらが謝りながらそれを手にとると、たいていその客の髪の毛らしかったり、毛玉もその人の着ている服と同じ色だったり。
自分でいれているのがまるわかりだ。こちらは作る人間も運ぶ人間もきっちり確認している。髪の毛も帽子の下に網を被り、入店前にロ-ラ-で丹念にとっている。服はユニフォーム。
入る訳がない。
しかし、相手はお客様。
申し訳ございません、と平謝りし、作り治すか返金をする。
客は一杯分の料金で二杯食べられるか、ただで食べられると言う作戦だ。
こういう客がたまにやってくるとうんざりだ。謝ってもネチネチと責めたて、返金を口にしても、金の問題じゃない、とまた責められる。
最終敵に返金したら受けとるくせに。
もう来ないでほしい。
財布はきちんと持って帰って
サラリーマンが多いので、皆慌ただしく帰る。結果、財布を机に置いて食べる客が多く、忘れて帰ってしまう。女性客もいるが、ほとんどバッグを持っているので、こちらは忘れて帰らない。
財布の忘れ物、これも問題である。私達がすぐに気づけば問題はないが、隣で食べている客がパクって、そのまま店をでてしまう事がある。
忘れた客は、慌てて取りに戻ってくるが、財布はもうない。この時の客の形相。あきらかに従業員を疑っている。お前らの中の誰かが犯人だろ、と決めてかかり、怒鳴り付けてくる客もいる。
ユニフォームにはエプロンも含め、ポケットがない。だから取りようがない。早く気づかなかった私達も確かに悪い。食器をすぐに下げていれば防げたかも知れない。でも、持って来たものを持って帰らないからこうなるのだ。
カウンタ-席が多く、隣との仕切りがないので、財布は隣の客から丸見えだ。お金を払ったらすぐにス-ツの内ポケットにいれれば良いのに。警察だ、防犯カメラだ、と大騒ぎ。
急いでいたのではなかったのか?勘弁してほしい。
家の掃除より仕事場の掃除
掃除に打ち込む時間が多い。
食物を扱っているので、当たり前といえば当たり前だが、忙しくない時間帯にちょっと一息なんてとんでもない。
手が空くと客席をアルコ-ルで拭いたりガレ-ジを掃き掃除。トイレも男性は尿を飛ばす人が多いので、暇さえあればチェック。トイレ掃除は着ているユニフォームでは出来ないので、着替えてから。
女性が多い職場なのに、お喋りをしようにもほとんど出来ない。床もちょっと汚れたらデッキブラシでごしごし。ゴキブリが店内をはい回るなんて事にならないように必死だ。
また、客が入ってくる時に、一緒に虫が飛び込んでくる事があるが、そうなれば皆、気が抜けない。どうか客に気づかれませんように、と虫を目で追いながら作業を進める。
壁やガラスに虫が止まったら、どうかそこから飛びませんようにと願う。虫が飛んでいるだけで、文句をいう客がいるからだ。止まったら客に気づかれないように、そっと始末する。届かない上の方に止まったら、手が届く場所まで降りてくるのを待つ。
これから虫が多い季節だ。家ですばやく始末する技を磨こう。
パ-トでも職位がある
働いている人間は女性が多く、ほとんど主婦で年齢もそうそうかわらない。だから、色んな小競り合いがある。プライベ-トな小競り合いはないが、仕事では多々ある。
職位が上がると当然時給が上がる。働いている年数はまちまちだか余り差がなく、仕事っぷりも皆、似たような物だ。仕事ぶりに応じて時給が上がっていくシステムは嬉しいが、個人ではなく、チェーン店なので全体を見る。
つまり、ここの店舗は今月は2人とか、先月一人上がったから向こう三ヶ月は誰も上がらないとか。利益の問題らしいが、こっちはたまらない。そろそろ一人上がるだろうな、と言う時は必死だ。
店長から見える位置で頑張ってます感をアピールする。面倒な事務仕事を率先してやる。休憩時間に休憩室の掃除をする。タイムカードを押して仕事からあがっても店を手伝う。
たかが10円20円の為に本当にキツい。こういうシステムをなくして、皆が能力に応じて時給が上がっていく。それが理想です。
小さなお得がいっぱいある
お得な事もある。新しいメニュ-の味見だ。牛丼だけでなく定食もあり、メニュ-もコロコロ変わる。新しいのが出ると客に「これ辛い?」や、「これってにんにくの匂いが残る?」等と聞かれるので、味を知っておかなければならない。
作り方も覚える為に一応作ってみなければならない。だから、新メニュ-が出ると、一人一回は食べる。もちろんタダなので昼飯代が浮く。普段でも従業員食としてかなり割安だけど、これは嬉しい。客にも胸を張って説明出来る。
それともう1つ。新メニュ-が終わる時にもいいことがある。定食にはそれぞれソ-スを絡めたり上からかけたりする物がほとんどだが、このソ-スがほぼ余る。
メインの肉がなくなれば、そのメニュ-は販売終了で、発注時に一応肉とソ-スの量を合わせてるが、なぜかたいてい合わない。余ったソ-スを持って帰れるのだ。
市販では出回っていないので、家で料理に使う。しかも全て味が凝っていておいしい。トンテキソ-ス等は絶品だ。家ではトンテキの時はトンカツソ-スを使うが、うちの店のトンテキソ-スをかけると、安い肉も高級料理になる。
後、作り間違えた料理も皆で食べる。店長や上の人がいたらやらないが、いない時もあるので、そういう時はラップをかけておいて後からいただく。皆主婦なのでタダな物には弱いのだ。
管理人からのコメント
料金の安い店には低俗な客が集まりますから、クレーマーも多くなるのでしょうね。
クレーマーと接したくないから起業するなら高級料理店が良いと聞いたことがあります。(まぁ、高級店でも一定数のクレーマーは存在するのでしょうけど)
それにしても自分の髪の毛や毛玉を混入しておいて難癖つけるのは質が悪いですね。アメリカなら、店員は悪くないと突っぱねそうな気がします(笑)
日本人はお客様を大事にしすぎるから客がつけあがるんです。この悪しき風習は徐々に治していきたいですね。