憧れのショップスタッフになった
37歳、女性、以前アパレル業界にいた頃の話である。
私が勤務していたのは、花柄やひらひらシフォンのワンピースなどを取り扱うショップで、客層のターゲットは、20代女性、清楚な王道お嬢様といったスタイルが好きな方にはどストライクなお店。
価格帯としてはトップスが5,000円〜、ワンピースは2万円代〜といったところで、決して安くはない。でも上品さを求める方にはもってこいなお洋服がを扱っていた。
かくいう私も、若かりし頃、そのショップのお洋服の大ファンで、スタッフとして採用された時には、かなり舞い上がっていた。
毎日好きなお洋服に囲まれてお仕事できる!社員割引はどれくらいなんだろう?などと浮き足立って初出勤した。
初めて店に行った時に、他のスタッフがとてもまぶしく見えて、とても気がひける思いがしたけれど、それ以上にここで働くんだぁという期待の方がはるかに上回っていて、夢いっぱいだった。
可愛いショップの裏側には…
そのようなわけで、夢見がちだったぶん、ギャップがかなりあった。
まず、私がイメージしていたアパレルショップの店員とは、好きなアイテムで身を包み、お客様と談笑しながら、いろんなコーデを考えてオススメしたり、トルソーを飾るといったもので、華やかで楽しいお仕事♪というところだった。
が、初日に入ったバックヤードで衝撃を受けた。
女の子度満点の可愛い内装のお店の裏に、ゴッチャゴチャに置かれた季節関係なしのファッションアイテム、さらに奥に進むとスタッフの私物、それもなかなか男前な、おつまみ系スナックやタバコがごたごたに置いてあった。(販売品が汚れるような置き方はされていないのでご安心を)
お人形のように可愛い彼女たちも同じ人間なんだと少しホッとしたりもしつつ、夢から醒めた瞬間だった。
高い棚の上に積み上げられたものはどうやって取るのだろうと思ったりもしたが、すぐに解決した。スタッフが、棚によじ登ってとっているのを目にしたのである。
かなり驚いたが、すぐに習得した。
ショップスタッフのお仕事とは
また、今思えば当然のこととはいえ、毎日のようにアイテムの入荷がある。配送業者さんが置いていった段ボールの山に目が点になったことも…。
中のアイテムを傷つけないよう気をつけながらそっと開け、まずは検品だ。
うわぁぁ可愛い!などと思う間もなく、まずはとにかく検品検品そして、検品…
簡易包装をひたすら開けながら、不良のものがないか、サイズ、カラー、そしてアイテムも数は納品書と相違ないか、確認しながら、とりあえず手当たり次第品出しをする。
それが終わると今度は、どこにどう並べるか頭をひねる。ハンガーにかけるのか、たたんでディスプレイするか…その都度棚やトルソーの位置を変えることもあり、力も必要だった。
トルソーを運ぶ際、あまりの重さに落としてしまい、トルソーの上部が欠けてしまったこともあった。
午前中だけでぐったり、お昼にバックヤードでパンにかぶりつき、足裏用シートを貼って寝る…そして、勤務終了まで、またピンヒールで頑張る毎日だった。
販売員という名の下に
ギャップもあったが、やはり販売員。お客様対応が第一である。
山のような入荷品も、お客様の来店が増える時間にかからないように、いざとなったらすぐにバックルームに押し込めるように計算しながら作業していく。
瞬間的には、この段ボールが全部片付くまで誰もこないでくれ!と思うこともあったが、そうも言っていられない。
なんといっても、作業員ではなく販売員。今日の売上目標、それを分担した個人売上目標が課せられているのである。
好きなコーデを提案して、満足してもらうまで試着してもらう、それだけでも楽しいと思っていたが、全くのひやかしはそれはそれで困ったものである。
仕事なのだから当たり前なのだが、お嬢様ファッションに身を包んで、にこやかにしつつも、頭の中で常にそろばんをはじいていたこともあった。
売上ノルマに関しては、ショップによって差があるかもしれないが、私のいたショップはけっこうな締め付けだったのだ。
総合的にみてのアパレル店員のお仕事
そのようなわけで、それなりのギャップもあったが、総合的に見て楽しい職場であった。
スタッフやお客様とのおしゃべりが純粋に楽しかったし、やっぱり好きなものに囲まれて仕事をするのはウキウキするものだ。
自分に合ったコーデに納得して買い物した時、散財の興奮とともに、満足感があるものだと思うが、販売員の方もそれは同じである。
特に、私もよくやっていた販売テクだが、お客さんが最初に気に入ったアイテムの試着時に、この方にはこっちのアイテムの方が絶対ハマる、と思ったアイテムをダッシュで取りに行き、こちらもお似合いになると思うので…と勧めたものがぴったりきてのお買い上げの時など、「お姉さんに見てもらってよかった〜」などと言ってもらえるととても嬉しかった。
もちろん、クレーム対応に頭を悩ませることもあったし、 華やかではない裏側を見たり、時には失敗することもあったが、総合的に見てとっても楽しいお仕事だったと思う。