都合のいい女 ※ 未熟だった私の恋愛話

恋愛知らずだった若い頃

私は40代の専業主婦。

人より恋愛経験が少ない方なのではないかと思っている。

子供の頃には興味のある男の子の話で盛り上がったこともあったが、本格的に誰かが恋愛しているという噂になったのは、中学生になってからだった。

恋愛関係をおちょくる人が居るので知ったのだ。

それでもカップルとなっている人はわずかで、高校生くらいになると中退する人も多くなってきたし、私の友達の2人くらいは結婚し、子供まで産んでいた。

出会いのない私にとっては、遠い未来の出来事にしか思えなかった。

友達が家事をしていたり、子供の為に働いたりという事は想像できない部分が大半だった。

私は女子校だから、余計に恋愛経験がなかったのだと思う。

というか、自分自身がそれほど容姿淡麗というわけでもなく、どちらかというと綺麗ではない方なのだ。

男性から見ても、さして魅力があるという風に見られていたわけではないと思う。

社会に出てからも付き合いたいと思えるような人は存在しなかった。

中にはアプローチしてくる人もいたし、人づてに私のことが好きだと言う人がいると言われたこともあったけど、その人達に興味が少しも湧かなかったのだ。

突然現れた異性の存在

最初の恋愛が訪れたのは水商売を始めた頃だった。

私は昼間は一般的な仕事をやっていて、夜は水商売を始めていた。

理由は単純にお金が欲しかったから。

なぜそんなにお金に固執していたのかという事は、今になってはよくわからないけど、自分に見いだせる価値観がお金にしかないと思っていたのだ。

その頃、女の子がお客さんの席に着くタイミングを見計らう役割をしている男性スタッフがいた。

中々のイケメンで端から見ればかなり魅力的。

そのお店で海に行く旅行の企画があったのだが、その時にその男性からのアプローチを受けた。

樹々が立ち並ぶ場所で突然手を繋いできた。

手を繋ぐ男性と言えば父親ぐらいしかいないから私は動揺したし、これほどの容姿端麗な男性が私に気があるとは思えなかった。

だけど、やはり女性というのはある一定の年齢になると、男性に引き寄せられていくという面を持っている。

周りの女の子は同棲していたり結婚していたりと、私と立場は全く変わっていったし、残された時間もわずかなのではないかと、焦りが常に付きまとっていた。

そんな時に現れた救世主なのではないかと思ってしまったのだ。

「うぶ」という言葉があるけど、私はその状態だったから、相手の性格を確認する力が全く無かった。

都合のいい女になってしまった

案の定、私は彼にとって性的欲求の対象でしか無かったのだ。

最初の段階で近くのトイレに連れ込まれ性交渉をしようと誘ってきたのだけれど、私にはその経験も無かった状態だったし、そんな場所で自分の貞操を失うなど考えつかない事だった。

その時は断ってしまったのだが、彼とは毎日のように顔を合わせる立場なのだ。

その上、相手は毎日のように自宅へ来るようにと誘ってくる。

彼以外の男性からのアプローチがあれば、まだ考える余裕があるけれど、私は男性というものを知ることがなかったので未知の世界だったのだ。

それに、何回も家に来てよと懇願されてしまうと、情に流されてしまう部分もあった。

結果的に私はその人の家に行くことになり、体の関係を持つことになってしまった。

ところが、相手側は私が処女であるのを知っただけで焦りを感じていたようで何故なのかと童謡した。

水商売にいる女性というのは、誰もが男性と枕営業しているとでも思ったのだろうか。

大半の水商売にいる女性は、お金が欲しくて働いているのであって、男性に興味があるから働いているのではないのだ。

その自覚も当時の彼にはなかったのだと思う。ただ、それを知ってからも誘いは終わることがなかった。

悪事を知ってもやめられない心

何回も彼の家に行っていると、私は結果的に彼の恋人なのではないかと錯覚する部分もあった。

けれど、彼は店の女の子全員に手をつけていたようだった。

少人数の営業だったけれど、綺麗な女の子もおり、そういった女の子には彼氏がすでに存在していたので、彼がつまみ食いできる状態では無かっただけだった。

私のように水商売に向いておらず、さして男性からも興味をもたれることがなく、若干寂しさや侘(わび)しさを持っている女性というのは絶好のターゲットだったと思う。

私は家庭内にも問題があり、常にひとりぼっちという感じ。20代に突入してからは、家族と食卓を共にすることも無くなっていた。

母親にも毛嫌いされていた。そんな時に家に来いと言ってくれる人がいるというだけで、どこか救われているような気分になってしまった。

彼には本命の彼女がいると言うことを知ってしまっていた。それでも、私は2番目でも3番目でもいいから、付き合いを継続したいと申し出ていたのだ。

1度転がり始めた感情はストップさせることも難しくなってしまう。その先はどうなるかなど考えることもなく、ただ温かみや温もりが欲しいと思っていた。

けれどやはりそれは間違いなのだと気づくのにそう時間もかからなかった。

関係をやめた理由

彼と私の関係が途切れた理由は、ほかの女の子のつまみ食いが発覚した時に起こった。

女性同士の揉め事というのは一旦火が付けば爆発する。

よくよく考えると、その女の子も被害者の1人ではあるけれど、彼は私のものだと主張してきた。

私は寂しさなどを抱えている部分があったけど、人と揉めるのは嫌だった。

男が欲しいだけで揉めるなどというのは、結果的に低俗な事でしかない。しかも、相手には本命の女の子がおり、彼の欲望の巻き添えになった私達は道具の1つでしかない。その道具と道具が争っていると状態は今から考えるととても滑稽だ。

私も一度情が移ってしまった相手から、心が離れるというのは辛い事でもあった。

けれど、このままでは仕事がうまくいかなくなることは予想できたし、やむなく私はその水商売の店を辞めることに決めたのだ。

全く恋愛経験のない私が、なぜこんなことにならなければならないのかと悔やまれる部分もあったけど、世の中にはどうにもならないことがいくつもあるのだと理解するしか方法は無かったのだ。

自分は使い捨てであり、都合のいい女の私でも未練がたっぷりと残っている状態。その感情は自分でどうすることもできなかったのだ。

恋愛はいつでもやり直せる

心の片隅に彼の存在が残っていたのは、勤めていた地域に行った時だけに起こる現象だった。

当時は1人でカラオケに通いつめており、時々泣いていることがあった。

いいように扱われた憎しみよりも、捨てられてしまったという事の方が圧倒的に心の寂しさの部分を占めていたのだ。

恋愛と言えるような状態かよくわからなかったが、一度接点を持ってしまった人間関係を断ち切るというのは、それだけ勇気がいるものだ。それは恋愛関係だけではなく、友人関係、家族関係と色々あると思う。

絶縁というのは二度と会えないという事だから、未練がましいとはわかっていても、彼がチョコレートを朝食にしている事や、部屋の間取り、好きな曲などいくつものことが思い出された。シャンプーも、彼の家に置かれていた物と同じ物を選んでいた。

その香りを自分で感じるたびに懐かしさや辛さが復元されていた。

だけど、結果的に若い時の失敗というのはやり直せる。

私が恋愛経験をしたのは20歳の頃だったから、それなりに体力もあった。
心の回復力も早かったと思う。

恋愛で辛い思いをしている人も多くいると思うけど、嫌な経験でも結果的に次のステップに行くチャンスだと思い、ゆっくりと前向きに考えていくことが大切なのだと今は思っている。

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